思いは叶う
高校時代の同級生に元プロ野球選手がいる。
同級生、といっても同じクラスになったこともなく、話したこともない。
名前と顔を知っている程度の存在だった。
向こうは私のことなど知らないだろう。きっと記憶にはないと思う。
彼は親友と同じクラスだったので、私の方はよく顔を見かけていて知っていたのだ。見上げるような大きな体に日焼けした真っ黒な顔はもちろん、何より思春期の坊主頭は目立っていた。
公立の強くもなかった高校にスカウトなんてくるはずもなく、大学か、社会人かでスカウトされたらしい。
それから投手としての彼の活躍は、同級生に会うたびに話題に上がったり、テレビで観たりして、時々耳に目に入ってきた。阪神タイガースの選手としてオールスターに出たときは、画面を観てちょっと感動した。出場を終え、『どうやったら野球が上手くなりますか』という子供からの質問に笑顔で答えていた彼はとても眩しかった。
数年前、母校の先生に近所で偶然会ったとき、
「彼は野球部にグローブやらバットやら、いろいろ道具を寄付してくれているんよ」という話を聞いて“偉いなあ”なんて思っていた。
この間、親友とご飯を食べたとき、何気に彼の話題になった。
親友は当時よく彼の隣の席になっていたらしく
「朝練と授業終わってからの練習で 毎日そりゃあよう寝てたわ。
ウトウトとかじゃなく、ほんまに机につっぷして寝てたよ」という。
確かに野球部の練習は厳しく、そういえば私のクラスの野球部の友人も、
授業中それは見事によく寝ていたのを覚えている(笑)。
「でもね・・・」親友は続ける。
「俺は絶対プロ野球選手になる!!」
彼は毎日そう口癖のように言っていたと。
聞き飽きるぐらい、そう言っていたと。
それを聞いて、心が震えた。
『ああ・・・すごい。すごいな・・・。ほんまに夢、叶えたんやなあ・・・』
あきらめず、 夢を掴んだ彼に感動した。
厳しいプロへの道。
彼の思いの強さが引き寄せた運命に、心の底から感動した。
そして思った。 強く信じて進めばやっぱり 夢は叶うんや・・・と。
今になって親友から聞いた言葉で、過去と現在、私の中で何かが繋がった。
2年前のシーズン終了後に彼はユニフォームを脱いだ。
その年齢まで投手として現役を続けられたのはすごいと思う。
ある監督に呼ばれ、昨年からコーチとして再びユニフォームを着て頑張っていると聞いた。なんて素晴らしい野球人生だろう。ほんとにそう思った。
「ありがとう。
あなたの活躍は名前も知らない同級生を、とても励ましてくれています」
できることなら、そう彼に伝えたい。
これまで様々な場面で、私の背中を押してくれた彼の姿に感謝している。
もしも、そんな時が来るなら・・・・・・。ちょっとは自分も胸を張って伝えられるようでありたいな、なんて思っている。

